社長は身代わり婚約者を溺愛する
「私は初めてで。」

すると香澄さんは、目をパチパチさせている。

「あんなに仲がよろしいのに?」

「……ええ、まあ。」

ああ、上手く誤魔化すのって、辛い。

本当は打ち明けたい。

私は、お嬢様でも何でもないって。


「あっ、あの方。三家グループのお嬢様よ。名前は奈々さん。」

「よく、知ってらっしゃるんですね。」

「当然よ。年頃になると、それぞれのパーティーにお呼ばれするんですもの。礼奈さんだって、そうでしょう?」

「ははは。」

私は、そういうパーティーに呼ばれた事がない。

お嬢様同士は、そういうのでお互いを知って行くのね。

勉強になるわ。


「あちらは、西条華さん。成り上がりの家なの。」

「成り上がり?」

「お父様が一代で財を成したのよ。私達の世界では、新座者ね。」

だとしたら、香澄さんのところは、代々お金持ち?

あ、怖くて聞けない。


「それでは、皆さま。今宵は芹香お嬢様の為に、お集り頂きありがとうございます!」

司会の人が、声を掛ける。
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