社長は身代わり婚約者を溺愛する
それを見た信一郎さんは、私を抱きしめてくれた。

「泣くって事は、まだ俺の事好きなんだな。」

「そんな事言っていない。」

「頑固だな。まあ、礼奈のそういうところも、好きだけど。」


信一郎さん、ずるい。

そんな事言われたら、また泣けてくる。


「そんなに俺の事好きなのに、このまま諦めるのか。」

「だって、もう結婚できないじゃない。」

「そんな事はないよ。」

何で信一郎さんは、私に期待を持たせるような事ばかりを言うの?

芹香と結婚するんだから、私とは結婚できないじゃない。


「礼奈は、俺に嘘ついてまで、俺と一緒にいようとしたじゃないか。」

「うん。」

「あの時の礼奈は、どこに行った?あの時の情熱は、失くしてしまった?」

信一郎さんの胸の中で、あの時の事を思い出す。

「あの時とは、状況が違うよ。」


あの時は、信一郎さんしか見えなかった。

でも今は、芹香や両親の事だって見える。

「礼奈は、芹香さんと俺との結婚にこだわっているのか。」

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