社長は身代わり婚約者を溺愛する
車は、大きな道を通り抜け、住宅地へと入った。

確かここって、高級住宅街だよね。

お金持ちしかいないこの一帯に、信一郎さんの家があるって事?


「緊張している?」

「う、うん。」

気づけば、服もいつも家で着ている物だ。

こんな見すぼらしい恰好で、信一郎さんの相手に、選んで貰えるのだろうか。

「大丈夫。両親は、俺に甘いから。」

以前、お店の庭に忍び込んだ時の、信一郎さんの両親が思い浮かぶ。

そんなふうには見えなかったけれど。

甘いって、どの程度なんだろう。

もうそれしか、考えられなかった。


「ここだよ。」

車が着いたその家は、大きな屋敷という感じで、とても威圧感を覚えた。

「さあ、行こう。」

信一郎さんに背中を押され、屋敷の玄関に向かった。

インターフォンを鳴らすと、男の人の声が聞こえた。

「信一郎です。」

そう言うと、大きな門がゆっくりと開いた。

その中に踏み入れると、とても綺麗な日本庭園が現れた。

そんな家って、あるの⁉

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