社長は身代わり婚約者を溺愛する
「坊ちゃま。お待ちしておりましたぞ。」

「坊ちゃまは、もうよしてくれよ。」

「すみません。なにせ、小さい頃から見ておりましたから。」

執事さんなのかな。とてもお年を召した方。

その人が、玄関まで案内してくれた。


「信一郎様。その方は。」

「ああ……」

信一郎さんは、私を抱き寄せてくれた。

「俺の結婚相手。」

「ほう。」

その執事さんは、私を見るとニコッと笑ってくれた。

私も釣られて、笑顔を見せる。


「森田。今日はお父さんとお母さん、いる?」

「いらっしゃいますよ。お二人共、居間でくつろいでいらっしゃいます。」

「有難う。」

信一郎さんは、玄関で靴を脱ぐと、私を居間に連れて行った。

「おお、信一郎じゃないか。」

「お父さん、久しぶりです。」

信一郎さんは、居間の前の廊下に座った。

「そんなところに座っていないで、こっちに来なさい。」

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