社長は身代わり婚約者を溺愛する
信一郎さんのお母さんが、手招きをする。

「お父さん、お母さん。今日は、僕の大切な人を連れて来ました。」

「大切な人?」

お父さんとお母さんは、顔を見合わせて、首を傾げた。

「礼奈、入って。」

緊張しながら、私はお父さんとお母さんの前に座った。

「初めまして。森井礼奈と言います。」

辺りがしーんとなる。

何?この凍り付いた雰囲気。

「どういう事?信一郎。」

「礼奈と僕は、結婚を前提にお付き合いしています。」

「結婚前提って、あなたには芹香さんがいるじゃないの。」

お母さんは、確か芹香の事、気に入っていたんだよね。

「お母さん、僕は芹香さんと結婚はしません。」

「何だって⁉」

お父さんも驚いている。

「僕はここにいる礼奈と結婚します。」

信一郎さんが、はっきり言ってくれたお陰で、胸がじーんと熱くなっている。

信一郎さん。ここまでしてくれるなんて。

何で私、もっと信一郎さんの事、信じなかったんだろう。


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