社長は身代わり婚約者を溺愛する
私がお礼を言うと、信一郎さんのお母さんはため息をついた。

「芹香さんが、娘になってくれると思っていたのに。」

うぅ。お母さん、許して下さい。

「全く、金はやり損だ。」

お父さんも、納得いっていない様子。


「それに何ですか。その恰好。まるで貧乏人みたいじゃないですか。」

頭をガーンと殴られた気がした。

「す、すみません。」

「恰好からすると、名家のお嬢さんではないようね。」

「でも、僕の会社の取引先の娘さんです。」

「まあ。じゃあ、信一郎をたぶらかして⁉」

お母さん、想像豊かな人なんだね。

話を聞いていると、だんだん自信が無くなってくる。


「お母さん。僕はたぶらかされていませんよ。」

「じゃあ、どうして信一郎と礼奈さんが付き合う事に?」

そう言われると、信一郎さんは私を見つめた。

「運命で惹かれ合ったんです。」

「信一郎さん……」

信一郎さんも私と同じように、運命を感じてくれていたの?

私達は、恥ずかしいくらいに、信一郎さんのお父さんとお母さんの前で、見つめ合ってしまった。

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