社長は身代わり婚約者を溺愛する
「ずっと一緒にいような。礼奈。」

「うん。信一郎さん。」

それは夢のような時間だった。

あの日、感じた運命が、今現実になっていると感じた。

幸せって、こういう事を言うのだろうと思った。


その時ふと、目を外にやると、運転席の前に芹香が立っていた。

「きゃっ!」

「うわっ!」

私と信一郎さんは、飛び上がる程驚いた。

信一郎さんは、運転席のドアを開けると、車の外に出た。

「芹香さん。そんなところに立っていたら、危ないじゃないか!」

「何よ。堂々と浮気する気?」

「浮気って……俺と君は、付き合っていないだろう。」

「婚約したじゃない!」

「あれは、君が勝手にした事だろう!」

芹香が、見た事もないような剣幕で怒っている。


「芹香。」

私も車を降りた。

「もう止めて、芹香。信一郎さんに芹香と結婚する気はないって、分かっているでしょう?」

「親同士が決めた事よ。私達は、それに従うだけ。」

私と信一郎さんは顔を見合わせると、うんと頷いた。

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