社長は身代わり婚約者を溺愛する
「今日、礼奈を連れて実家に行って来た。」

「えっ?」

芹香の顔が歪む。

「俺の両親に、礼奈と結婚したいと言ってきた。」

「何ですって⁉」

芹香は恐ろしい顔をして、私に迫って来た。

「何をしてくれてるの⁉」

芹香が右手を挙げる。

殴られる!そう思った瞬間、信一郎さんが芹香を止めてくれた。

「さては、信一郎さんに頼み込んだんでしょ!」

「そんな事してない!」

「そうじゃなきゃ、信一郎さんはそんな事しないわよ!」

芹香が息切れをするくらい叫ぶなんて。

まるで、人が変わったようだ。


「芹香さん、俺が礼奈に行こうと言ったんだ。」

「……っ!」

芹香がバッグを、信一郎さんに投げつけた。

そのせいで、信一郎さんの手の甲が赤くなる。

「信一郎さん!」

「大丈夫だ。」

芹香はまだ、はぁはぁと息切れしている。

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