社長は身代わり婚約者を溺愛する
信一郎さんは、静かに頭を横に振った。

「むしろ、困るのは沢井家の方だろう。」

「馬鹿にしないで!」

芹香は、信一郎さんの手を振り払った。


私は芹香が可哀想になった。

芹香は、ちゃんと家の現状を、把握してるんだろうか。


「沢井は沢井で、やっていくわよ!また新しい相手を見つければいいんだから!」

私の胸に不安が過った。

「芹香!」

私は芹香の側に行った。

「新しい相手って?」

「援助してくれる家の人だったら、誰でもいいわよ!」

「そんなの、芹香らしくない!」

その瞬間、芹香に睨まれた。

憎しみが私を刺す。

「私らしいって、何⁉」

これが芹香?全くの別人だ。

「本当の私を見た事ないくせに!偉そうに言わないで!」

確かに、信一郎さんと芹香が出会ってから、彼女の知らないところばかりを見ている。


「でも……」

それでも、私は信じたい。芹香のいいところ。
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