社長は身代わり婚約者を溺愛する
「本当に力になりたいなら!友達だって思うんだったら!黒崎さんを頂戴よ!」

「落ち着いて、芹香……」

「できないんだったら、友達面しないで!」

胸がズキズキ痛い。

「芹香、それが芹香の求める友達なの?」

芹香がハッとする。

「私、信一郎さんの事好きだから、芹香には渡せない。」

芹香が一歩、下がったところを、信一郎さんが受け止めた。


「芹香さん、礼奈に負けましたね。」

「はあ?私が負け?」

「話を聞いている側としては、礼奈の意見に完敗ですよ。」

信一郎さんの顔を見ると、ほっと安心した。


「いいわよ。寄ってたかって、私を虐めて。」

「そんなんじゃないよ、芹香。」

「いいって、言ってるでしょ!」

その時、芹香が私から離れて行くような気がした。

「その代わり、黒崎家が潰れたら、礼奈のせいだからね。」

「えっ……」

「取引が無くなるって事は、そういう事よ!」

そして芹香は、走って行ってしまった。


「礼奈、安心しろ。ウチは簡単に潰れないから。」

「うん……」

私はその時、芹香を遠く感じていた。
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