社長は身代わり婚約者を溺愛する
「これからは、自分の道を探すわ。」

「芹香ならできるよ。頑張って。」

芹香は、ニコッと笑った。

ああ、いつもの芹香だ。

その途端、芹香はうつむいた。

「そうそう、そう言えば。」

「ん?」

「黒崎さん、元気?」

その質問の意図が、最初分からなかった。

「……最近、会えていないけど、元気だと思う。」

「そう。でも、大変そうね。」

「えっ?」

芹香が、私の方を向いた。

「黒崎さんの会社、倒産するんですって?」

私は目を大きく開けた。

「何かしたの?」

「別に、私は何も。」

「嘘!」

そう言えば、取引を止めるとか言っていたような。

でも、それで困るのは沢井薬品の方だって、信一郎さんは言っていた。

「私はただ、ありのままをお父さんに話しただけよ。」

そう言って芹香は、車の窓を閉め行ってしまった。


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