社長は身代わり婚約者を溺愛する
「仕事だよ。発注が多くて、追いつかないんだよ。」

私はため息をついた。

「また、調子に乗って引き受けちゃったんじゃないの?」

お父さんは、発注があると無理してまで引き受けるから、後で慌てる事が多い。

「いや、今回は断っても来るんだ。仕方ないから、1か月待ちにしたんだが、それでも発注が止まらなくて。」

「ええ?」

1ヵ月待ちにしても、発注が止まらない?


私は工場の奥の、事務デスクがある場所を見た。

そこには、山ほどの発注書があって、金額を見ると100万と書いてある。

「100万⁉」

「そうなんだ。それだけで100万の大口なんだ。」

「100万って言ったら、今までの2か月分の売上じゃない!」

「まあ、信一郎君の会社への手数料もあるから、1,5か月分ってとこかな。」


そんな発注が、ウチの工場に⁉

どうして、そんな奇跡がやってきたの⁉


「いやあ、信一郎君には感謝感謝だな。」

「信一郎さんに?」

「信一郎君が、絹のタオルを受けてくれなかったら、こんなに発注はなかったよ。」

私は、ジーンと胸が温かくなった。

あの工場を救ってくれた、信一郎さんの行動が、ウチの工場をここまで発展させてくれたんだ。

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