社長は身代わり婚約者を溺愛する
私は、涙を拭いた。

「従業員増やさないとね。」

「ああ、そうだな。前に働いていた奴に連絡しようと思うんだが、何せ手が空かなくてな。」

困っているお父さんを見ると、私も何かしなきゃと思った。

「私が連絡するよ。」

「おう、頼む。」


私はお父さんのスマホを借りると、前に働いていた人達に電話を架けた。

でも、皆直ぐにいいよとは、言ってくれなかった。

「私が電話したからかな。」

「いや、皆今の仕事で、生活が成り立っているんだろう。」

お父さんは、私と話しながら手を動かしている。

お母さんは、別のラインに付きっ切りだ。


その時、信一郎さんの会社の事を思い出した。

「信一郎さん、どうかしてくれないかな。」

「ああ?信一郎君?」

私はスマホを取り出すと、信一郎さんに電話を架けた。


「礼奈?ごめん、今仕事中なんだ。」

「ごめんなさい。どうしても、相談したい事があって。」

すると向こうから足音がした。

どうやら、場所を移動したみたいだ。

「どうした?」

「信一郎さんが提案してくれた絹のタオル、盛況で生産が追い付かないの。」
< 244 / 269 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop