社長は身代わり婚約者を溺愛する
「まあ、ゆっくり考えてよ。」

芹香は、私を玄関から送り出すと、タクシーを呼んでくれた。

「夜道は気を付けてね。」

「……うん。」

タクシーに乗って、私は自分の家までのあっという間の時間を、持て余した。


今すぐに信一郎さんに会って、抱きしめて貰いたい。

「信一郎さん……」

タクシーが私の家の前に着くと、私はそれを降りて、信一郎さんに電話した。

電話は直ぐに繋がった。

『芹香?』

ドキッとした。


ー 自分の名前を名乗って -


まだ、できない。

できないよ、芹香。

「信一郎さん。今、時間大丈夫ですか?」

『ああ、芹香の為だったら、大丈夫にするよ。』

「有難う。」

信一郎さん、やっぱり優しいよね。

その優しさで、芹香だと騙している私を許してくれる?

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