社長は身代わり婚約者を溺愛する

第8話 痛む胸

そしていよいよ、3回目のデートの日がやってきた。

私はゆっくりと、部屋からの階段を降りる。


「今日は、一段と気合が入ってるわね。」

案の定、お母さんが仕事に行く振りをして、私を見送る。

「有難う。」

「ほんと、どこかのお嬢様みたいだね。」

お母さんは、私の肩をポンポンと叩いた。

「綺麗だよ。って、お母さんが言う事じゃないか。」

お母さんは、微笑みながら仕事場に行こうとする。

「お母さん、お父さんには黙っておいて。」

振り返ったお母さんは、うんと頷いた。

「安心しな。お父さんには、何も言ってないから。」

「うん。」

こういう時、お母さんが味方でよかったと思う。


「ところで、いつもより荷物が多いね。」

「ああ……」

お母さんには、本当の事言った方がいいかな。

「お母さん、私今夜帰らないかも。」

「かもって言うのは、振られる事もあるって事?」

私は正直に、うんと頷いた。
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