社長は身代わり婚約者を溺愛する
「そう。もし振られたら、その時は真っすぐ帰って来なさい。」

「うん。そうする。」


そして、お母さんに行って来ますと伝え、私はタクシーに乗った。

「プリンスホテルへ。」

「はい。」

信一郎さんが予約してくれた、高級ホテル。

私を抱く為に、最高のもてなしをしてくれた。


今夜、私は自分が芹香じゃなくて、礼奈だって伝える。

そこで信一郎さんが、難色を示したら、そこで終わり。

でも、恐らく信一郎さんは、困るだろう。

沢井家との繋がりができると思っていたのに、それが無くなるのだから。

そして、残ったのは玉の輿を狙った貧乏な家の娘の私。

絶対、私との結婚は断ると思う。


私は、タクシーの中で、頬を叩いた。

「よし!やってやろうじゃないの!」

振られても、上々!

お母さんが言う通りに、真っすぐに家に帰ればいいんだ。

目的のプリンスホテルは、もう目の前に来ている。

私は、その高層階のホテルを見つめた。
< 72 / 269 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop