社長は身代わり婚約者を溺愛する
タクシーが玄関の前に着いて、私は軽やかに降りた。

「ここね。」

荷物を持って、ホテルの中に入ると、信一郎さんが近づいて来た。

「芹香。」

「信一郎さん。」

すると信一郎さんが、私の荷物を持った。

「部屋を案内するよ。」

「うん。」

そして二人で、エレベーターに乗った。


私は静かに心臓が鳴っていて、なかなか信一郎さんに話しかけられなかった。

「芹香、緊張している?」

「えっ⁉」

私は自分の声の大きさに、口を覆った。

「そんなに身構えないで。別に変な事しようと思ってないから。」

「う、うん。」

そうよ。信一郎さんが、変態な訳ないし。

する事は、皆一緒なんだから。

そして何気に、信一郎さんが私の手を繋ぐ。

「思い出に残る一夜にしよう。」

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