社長は身代わり婚約者を溺愛する
「どこに行ってたの?」

「……ちょっと買い物に。」

「そんなお金、あるの?」

私は買って来たスーツが入った袋を、ぎゅっと握りしめた。

「必要だから買ったんだよ。」

「そう。もしかして、就職先決まったの?」

そして分かった。

今私は、芹香の監視下にいる事を。


「まあ、いいわ。これ、頼まれていた100万円。」

ずっしりと重い封筒が、私の手に渡った。

「返済はいつでもいいから。」

そう言って、帰ろうとする芹香を、追いかけた。

「芹香、返済は毎月少しずつ返すから。」

芹香が本当の友達だったら、芹香に甘えていただろう。

だけど、それも今は分からない。

「うん。いいわよ。」

そう言って芹香は、足取り軽く家に向かって行った。

それを、じーっと見つめる私は、もう芹香の僕だ。


私は芹香の姿が見えなくなると、家にいる両親にお金を持っていた。

「はい、遅くなったけれど、これ100万円。」

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