社長は身代わり婚約者を溺愛する
そしてその日は、書類チェックの案件が溜まってしまって、残業になってしまった。

かろうじて、下沢さんがいてくれるから、助かる。


「下沢さん。これは訂正ですか?」

たまにわざとそういう表現をしているのか、本当に間違っているのか分からないので、下沢さんに聞く時がある。

「ああ、訂正だね。ったく、そんな間違いする奴、誰だよ。」

下沢さん、最近私にも慣れてきて、愚痴を吐く時がある。

それが面白い時もある。

「あっ、終わりました。」

「お疲れさん。」

二人でパソコンをシャットアウト。

荷物を持って、立ち上がった時だ。


「この後だけど。」

「はい。」

「暇?」

これと言った用事はない。

信一郎さんにも誘われていないし、真っすぐ家に帰るだけだ。

「どうしてですか?」

「暇なら、飲みに行かない?」

どうしようと、悩んでいると下沢さんが、おでこをちょこんと叩いた。

「嫌だったら、嫌ってはっきり断んないと。」

「嫌じゃないんです。ただ、二人で飲むにはちょっと……」

< 97 / 269 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop