海色の世界を、君のとなりで。

しかし、いつも昼食を購買のパンで済ませているわたしは、今日もいつも通り箸を持っておらず。


……手掴み、はさすがに駄目か。


そう思うけれどそれしか方法がなく困惑していると、横からスッと箸が差し出された。


「使って」

「いいの?ありがと」


箸を受け取って、卵焼きを掴む。

そのまま口に運ぶと、ふわふわの食感と、ふんわりとした甘さが口内に広がった。


「甘っ。美味しい」

「そう、かな」

「うん。めっちゃ美味しい。わたし、これくらい甘い方が好き」


素直に感想を告げると、可奈はパァッと顔を明るくした。

思いが顔に出やすいところも、可奈の魅力の一つだ。

(めん)を被ることなく、感情と表情が直結している。

時にそれは難点になる場合もあるだろうけれど、そんな性格がわたしは結構好きだ。


嬉しいことは全力で表現してほしいし、嫌なことは包み隠さず顔に出してほしい。

言葉だけの飾りの関係ではなくて、心から「親友」と呼べる関係性をこれからも続けていきたいから。
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