海色の世界を、君のとなりで。

息を潜めて会話を聞く。

自分のことを言われているわけではないのに、ドクンドクンと嫌な鼓動が響いている。


「休んでくれないかな」

「あー、いっそのこと怪我とか、さ」


ガチャ。

その音でバッと振り返った彼女たちは、バツが悪そうな顔をしてわたしを見つめた。


「栞……」

「────そういうの、よくないと思う」


はっきりと告げると、彼女たちはますます顔を歪めて、ひきつり笑いを浮かべた。

けれど、黙っていられなかった。

可奈だって、一生懸命練習している。

それを罵倒するなんて卑劣だ。


…休んでくれないかな。怪我とか、さ。


どうしてチームメイトにそんなこと言えるんだろう。

彼女たちに人の心というものはないのか。
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