海色の世界を、君のとなりで。
会話の内容はいつしか可奈のことからわたしのことに変わっていた。
「なんか、最近の栞変だよ」
「うん。レギュラーのくせに余裕そうにしちゃって」
「本気でやってないよね、練習」
────栞からは、やる気を感じない。
その言葉が放たれた瞬間、プツ、と何かが切れる音がした。
今にも切れそうなところを必死に必死に繋ぎ止めていたのに、一度千切れてしまえば元に戻ることはない。
「……なん、で」
低く、唸るような声が口から溢れる。
自分でも聞いたことがないような声だった。
自分はこんなにも憎しみを込めることができたのか。
怒りを込めることができたのか。
それに初めて気付くと同時に、この感情の抑え方をわたしは知らなかった。