海色の世界を、君のとなりで。

死にたいわけじゃない。

けれど、ふと。

ここじゃない、どこかに行ってしまいたい。

時間という概念が存在しない、永遠に時間が流れる、時が止まった世界。

そんな世界があるのなら、そこに逃げてしまいたいって。

そう、思う時がある。


将来のこととか、友達のこととか、親のこととか。

周りの人のこととか、自分のこととか。

そういうものを考えなくても済む世界に行けたのなら、どんなにいいだろう、と思った。


それがたとえ誰もいない、一人だけの世界だったとしても。

スマホやテレビのない、世界だったとしても。


澄み渡る天色(あまいろ)の空。

ふわりと浮かぶ白い雲。

深緑の木、咲き誇る真紅の花。


そして、青い────海。


広大な自然が広がる場所であるのなら。

わたしはそれ以外、何もいらない。
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