海色の世界を、君のとなりで。

「どうして……はやく、かえってきてよ」


ふと、抑えていた感情が溢れ出す。

寂しい。虚しい。────会いたい。

わたしの背を撫でて「大丈夫だよ」って言いにきてよ。

昔みたいにわたしを抱きしめてよ。


何年経っても、やっぱりわたしは慣れることなんてできない。


あなたがいない世界で生きていくことが、こんなにも辛いなんて。


わたしはこんなにも弱くて、脆くて、すぐに壊れてしまうから。

絶対にあなたがいないとだめだったのに。


「───…馬鹿っ……」


どうして大切なものはいつも、わたしの前からなくなってしまうのだろう。


違う。

勝手に被害者面するな、ともう一人の自分が叫んでいる。

つうと頬を伝う一筋がアスファルトに零れると同時に、ははっ、と乾いた笑いが洩れた。

「なくなってしまう」なんて、それじゃあわたしは可哀想な被害者だ。

正確には「なくした」だろう、自分自身で。


目だけを動かして空を見上げる。

今日の空は灰色の雲で覆われていて、まるで惨めなわたしを戒めているようだった。


「……ごめんね」


そんな呟きはきっとあなたには届かない。

わたしはこれからも自分が犯した罪を背負って生きていくんだ。

だって、正真正銘。


『いなくなっちゃえばいいんだ!』


あなたの手を離したのは、あなたを"殺した"のは────。


わたしなのだから。
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