海色の世界を、君のとなりで。




ドンッ、とわざとらしく身体をぶつけられて、思わずよろける。


「栞ちゃんっ」


パッと伸ばされた手に支えられて、なんとか倒れずにすんだ。

「ありがとう」とお礼を言いながら身体を起こす。


「今の絶対わざとだよね。ありえないんだけどっ」


眉を寄せて言う可奈は、「大丈夫?」と大きな瞳でわたしの顔を覗き込んだ。

すれ違った後ろの方でクスクスと小さく嗤う声が聞こえてくる。


「あんなの放っておこう。どうせ栞ちゃんのことが羨ましいんだよ」


そう言いつつ、わたしよりも可奈の方が悔しそうな顔をしている。

今にも泣き出しそうな可奈の肩を引き寄せて、ポンポンと軽く叩いた。


あの日を境に、わたしたちバスケ部二年生の関係はギスギスし始めた。

もともと仲が良いとはお世辞にも言えなかったけれど、今はもう最悪だ。

険悪以外のなにものでもない。

お互い気を遣って抑え込んでいたものが、ついに爆発してしまった。

当然と言えば当然の流れであり、逆に回避することができたかと問われれば完全に否とは答えることができない。

わたしが我慢すればきっと、こんなことにはならなかった。
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