NGなきワル/バイオレンス長編作完全版!👉自らに過酷を課してのし上がったワルの非情とどうしようもない”ある焦がれ”…。
大打ノボルの秘められた黒い意思/運命の舞台、九州へ
野心という黒い聖火④



大打ノボルと三貫野ミチロウとの濃密な初日のミーティングは、日付の変わる前の深夜、場所を移して続いていた。

「…狭苦しいところで済まないが、当面は”ここ”で寝泊まり願えますか?」

「ああ、何から何まですまんな。居候の身にとっては上等の”宿”だ。三貫野、じゃあ、ココで続きを頼む」

”なんて男だ…!新幹線も飛行機も使わず神奈川から熊本まで長時間運転してきて、疲労はたまってるだろうに…。さっきの店では軽い食事をとっただけだ。昨夜は車の中で仮眠だったそうだし…”

「…ノボルさん、オレはいいが、アンタの方は運転で疲れてるだろう。続きは明日にしたらどうです?」

「いや…、アンタが大丈夫なら、具体的なアクションのとこまでは把握しておきたい。二日目になる前に…」

”二日目になる前に…”

この言葉は三貫野の胸にしっかりと届いた。





「わかりました。では、オレのプランを話す。最初に補足しておくが、オレは3プラン用意していました。その内、今日アンタと会い、色々ダベった結果でのベストチョイスを提示したい。それでいいですか?」

「ああ、それでいい。アンタの目利きは、先程の数時間で極めて高い信頼度を置けるものと確信できたしな。ワンチョイスを告げてくれれば、オレはそれでいくよ」

「了解しました!…では、オレがイチ押しで描いた絵図を明かします。それは…」

その後の二人による赫赫云々は、時間にして20分にも満たなかった。
だが、ノボルの表情は満足げだった…。


...


ノボルが床に就いたのは、明け方近かった。
彼のここ熊本での拠点は、三貫野の姉夫婦から任されているブティック店の倉庫部屋だった。

約8畳スペースはあり、トイレは室外の共有でバスはなしだったが、ミニキッチンと窓も一か所備わっており、幼くして宿無しの身という辛苦を骨の髄まで味わってきたノボルにとっては、”城”以外の何ものでもなかった…。

...


”ここ熊本こそ、オレの野心という聖火を灯す、まさしく聖地になる。オレの灯した火は早晩、美しき牙を現す。世の中というハード・フィールドに群れする、肥えたやくざというソフト・ターゲットへ向けて…”

大打ノボルは、横浜からはるか遠い九州熊本中心地の”居城”で、その黒い野望を熱く抱きながら冷めた熱い眠りについた…。



< 15 / 174 >

この作品をシェア

pagetop