とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
この(ひと)は本当はどんな仕事をしているのだろう。
文系よりも理系だな、と雰囲気からは思う。

詮索したくはないけれど「本当」を言われていないと思うと、小骨が喉に引っ掛かったような、むず痒さがあった。
それに今日は

「なんだか素っ気なかったですね」

わたしは素っ気なく言った。
そうしないと釣り合いがとれない。

「そう? 今までだって、君と俺はここではこんな感じじゃなかったかな」

「もう少し挨拶したりとか……してましたよ」

「俺はそう思わないけど」

こうもきっぱりと言われると、わからなくなってしまう。
わたし一人が変に意識していたのだろうか。

だとしたら恥ずかしい。
自意識過剰。ティーンエイジャーの初恋か。
おまけにこうして外まで追いかけてきてしまった。
こんなの、どうして構ってくれなかったの? と言っているのと変わらない。

わたしはこの(ひと)になにを求めているのだろう。

「そうですね。わたしの勘違いでした」

感情が零れないように、口先だけで言った。

店に戻ろう。
このまま真っ直ぐ帰ってベッドに突っ伏してしまいたいけれど、持ってきていない。
戻ったら、またあの男と話さないといけないのか。

ああ、今日は散々だ。
アヒージョに顔を突っ込むべきはわたしかもしれない。
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