とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
「話、ずらしちゃったな」

邑木さんが苦笑した。

「つまり、動揺してわたしを避けたってことですか?」

「いや。避けたのは、あとで愉しいから」

「あとで、愉しい?」

「由紀ちゃんはショートケーキの苺、いつ食べる?」

「なんですかその質問」

「いつ?」

意味がわからない。
そう思いながらも、わたしは中盤だと答えた。
邑木さんは軽く頷きながら言った。

「へえ。俺は一番最後」

「あの、言いたいことがわからないんですけど」

「我慢した方がおいしい」

「は?」

「愉しみは我慢のあとにあるから」

あとで会ったときに、愉しいから。
だからあんなふうに、わたしの存在を無視したと言いたいのだろうか。

なんてめちゃくちゃな。なんて自己中心的な。

「じゃあわたしがこうやって来たことは、邑木さんの邪魔をしたってことですね」

反撃のつもりで言った。
だけど邑木さんはダメージを受けるどころか、わずかに目を細めた。
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