とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
「……なんなんですか」

「本当はちゃんとキスしたいけど、君は嫌みたいだから。これくらいなら怒られないかと思って」

「わたし、じゅうぶん怒ってますけど」

「駄目だったか」

その言葉に、さらに不快指数が増す。
きりきりと胃が締め上げられていく。

「生とか死とか、あんなふうに軽々しく口にされるのは嫌ですっ。
冗談でも言うことじゃないですっ」

邑木さんから躰を離すと、引き止めるように腕がのばされた。
その腕をパシンと弾き、

「やだ、やめてっ」

風船が破裂するように腹から声が出た。
急激に辺りはしんと静まり返り、背後から歩いてきた女の子たちはわたしを追い越すと、一瞬だけ振り返って顔を覗き込んだ。

やばいやばい修羅場だ。やばい。ね、やばい。

ひそひそくすくす嗤う声が路地に消えていく。

やばいってなに?
驚いてもやばい。うれしくってもやばい。
やばいやばいやばいしか言わない。
そっちの方がよほどやばいじゃないか。

苛立ちが募った。じりじりと皮膚の下が熱くなっていく。
すると、邑木さんが口を開いた。
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