とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
「由紀、お願い」

邑木さんの人差し指の先端が、唇の間を割り入る。
前歯に触れた瞬間、まるで物欲しそうに口の中は唾液があふれだし、反射的に唇をすぼめて指先を咥えてしまった。

微かに微笑む邑木さんの唇。

キスしてもいい? なんて訊いたくせに、結局のところはわたしに拒否権なんてものはなかった。
いとも容易く、この(ひと)のペースに乗せられてしまう。


わたしはいったい、どうしたのだろう。

指先ひとつでこの(ひと)に揺さぶられる。
理性なんて、そこにはない。


へなへなと、力なく眉が下がっていった。
観念して瞼を下ろすと、邑木さんの手が肩に被さり、わたしの中に細く儚い電流が、ぴりりと走った。

「出して」

邑木さんはそれだけ言った。
なにを、とは言わずに。

それなのに、わたしはねだるように舌を差し出していた。

躰の芯が、微かに震える。

それは恐怖だった。
これから訪れる、快楽へ堕ちていく恐怖。

「やっぱり、きれいな舌」

ひたり、ひたり、と舌が重なってくる。
ゆっくりと味わうように舐め上げられ、肩が小刻みに震えた。
じょじょに吸い上げるように舌を()まれれば、熱のこもった吐息が甘く漏れた。
< 128 / 187 >

この作品をシェア

pagetop