とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
踵を鳴らしながらゆっくりと歩く邑木さんに指先を引かれ、バーの方へ戻った。
さっきよりも星が白く見える。
「ねえ、由紀ちゃん」
バーの前でぴたりと止まり、邑木さんが振り返った。
指先をほどかれた右手がぶらんと垂れ下がり、自分の指先を完全に邑木さんの手に預けていたことに気づいた。
「由紀ちゃんの猫は、きっと、しあわせだったよ。そうやって君に想われていたんだから。
だけど、ずっと後悔していたら、それはあまりうれしくないだろうから」
そこまで言うと、邑木さんはわたしの頭を撫でた。
祈るように。願うように。救うように。
やっぱりその手はあたたかくて、大きくて。
目の奥がきゅうっと熱くなった。
「君より長く生きてるくせに、月並みなことしか言えなくてごめん。
そういう経験がないから、正直、どうしたらいいかわからなくて」
「……いえ」
考えががらりと変わるような、真新しい言葉が欲しかったわけじゃない。
わかるよ、と同調して、物知り顔で頷いて欲しかったわけじゃない。
欲しかったのは、きっと。