とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
「なんで邑木さんは、こんな……。
わたしが男なら、いくら不倫でもわたしみたいな女は選びません。
趣味、悪過ぎませんか」

そう言うと、邑木さんは軽く吹き出した。
ふざけて言ったつもりじゃなかったのに。
この(ひと)の笑いのツボはよほど浅いのだろうか。
なんだかこっちが恥ずかしくなってくる。

「こんな感情を爆発させてばかりの女、普通は嫌でしょ」

ぽつりと呟くと、邑木さんは表情を変えた。
唇を歪ませ、ふっと微笑む。

「爆発された方が我慢されるより、ずっといい。
それに俺は別なときに、別な方向で爆発させてもらうから」

「別って?」

「感情じゃなくて欲情の方って言えばわかるかな」

「……邑木さんって案外、性の知識を得たばかりの子どもみたいなこと言うんですね」

「男はいつまでたってもガキだよ。母親の腹の中にいつ戻ってもおかしくないくらい」

「お母さんが迷惑ですよ、それ」

「じゃあ由紀ちゃんのお腹に入れて」

「じゃあ、ってなんですか。妥協みたいに」

「妥協じゃないよ。第一希望」

「第一希望だって嫌ですよ。気持ち悪い」

軽口を叩きあって、笑いあって。
ひとしきりそうすると、しんと静まり返った。

息をすることすら躊躇われる中、わたしを見つめる邑木さんの瞳はなにかに満ちていた。
そしてわたしもまた、なにかでひたひたと満たされていた。

なにか、の正体はわからないけれど。
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