とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
「由紀ちゃんは最近はどうなの、仕事」
「あ……辞め、たんだよね」
隠したかった。
動揺なんてしないで、さらりと言いたかった。
だけどわたしの口は重く、声はぽきりと折れそうなくらい細かった。
仕事を辞めることは罪でもなんでもないのに。
どうしてこうも居たたまれなくなるのだろう。
名刺と健康保険証を返却したときの、あの心許なさはどこからきているのだろう。
「そうなんだ。そしたらいまは求職活動中? それとも、ゆっくり充電中?」
「……充電中、かな」
わたしは苦笑する。
もる子ちゃんは「休め休め。フル充電まで、しっかり休んどきな」と軽く言って、それ以上は触れてこなかった。
前に、もる子ちゃんの務めるデザイン会社はなかなかの激務で退職者が多いと聞いた。
新卒で入社してからずっとその会社で働いてきたもる子ちゃんは、きっとたくさんの退職者を見送ってきたのだろう。
踏み込んでくるわけでも突き放すわけでもないこの距離が、ちょうどよかった。
「そういえば康からちょっと聞いたんだけど、ひーくんと別れて、新しい彼氏できたんだって?」
「あ、うん」
急に邑木さんの話を振られ、箸で掴んでいたミニトマトがぽろりとレタスの上に落ちた。
「あ……辞め、たんだよね」
隠したかった。
動揺なんてしないで、さらりと言いたかった。
だけどわたしの口は重く、声はぽきりと折れそうなくらい細かった。
仕事を辞めることは罪でもなんでもないのに。
どうしてこうも居たたまれなくなるのだろう。
名刺と健康保険証を返却したときの、あの心許なさはどこからきているのだろう。
「そうなんだ。そしたらいまは求職活動中? それとも、ゆっくり充電中?」
「……充電中、かな」
わたしは苦笑する。
もる子ちゃんは「休め休め。フル充電まで、しっかり休んどきな」と軽く言って、それ以上は触れてこなかった。
前に、もる子ちゃんの務めるデザイン会社はなかなかの激務で退職者が多いと聞いた。
新卒で入社してからずっとその会社で働いてきたもる子ちゃんは、きっとたくさんの退職者を見送ってきたのだろう。
踏み込んでくるわけでも突き放すわけでもないこの距離が、ちょうどよかった。
「そういえば康からちょっと聞いたんだけど、ひーくんと別れて、新しい彼氏できたんだって?」
「あ、うん」
急に邑木さんの話を振られ、箸で掴んでいたミニトマトがぽろりとレタスの上に落ちた。