とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
手持無沙汰(てもちぶさた)になり、テーブルに取り皿や箸を並べてみる。
三人分の食器がテーブルに並ぶのはははじめてのことで、違和感を抱いた。

「よかったー。間に合った」

邑木さんが戻ってくるより先に、弟が戻ってきた。

着替えなんて勧めるんじゃなかった。
この場をどう繋いだらいいのかわからない。

握りしめた手のひらの汗を感じていると、彼は部屋のなかをきょろきょろ見回した。
そういえばさっきもトイレの場所を邑木さんに尋ねていた。
彼はあまりここへ来たことがないのかもしれない。

そんなことを考えていると、視線に気づいたのか、彼はくるりとわたしに向き直り、またチェシャ猫の笑顔をつくった。
わずかに胃が、きゅっと絞まる。

「ちゃんと挨拶してませんでしたよね。
はじめまして。邑木シユウです」

「しゆう……」

「優しい(うた)、で詩優(しゆう)です」

少し言いづらい、けれどきれいな名前。

やわらかな響きは彼の見た目には合っている。
邑木さんとは対照的な、しなやかで中性的な躰のライン。

その姿は少しだけ似ている気がした。

天使の輪っかがひかる、さらさらと流れる栗色の髪も、長く儚い睫毛も。
少しだけ、似ている。
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