とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
「あの。俺の顔、なんかついてます?」

しまった。見すぎてしまった。
わたしは慌てて、だけど冷静に返した。

「すいません。ちょっと、知り合いに似ていたもので」

「それっていい知り合い? 悪い知り合い?」

間髪入れずに訊かれた。
笑顔の瞳の奥は、ちっとも笑っていない。


なんだろう。この態度は。
この、人を食ったような態度は。


「おでん、いいですね。お、牛すじがある」

彼は明るい声をあげ、鍋をのぞき込んだ。
まるでついさっきの言葉に、深い意味なんてないかのように。

「餅巾着あるかなあ。あ、あったあった。大根、いい感じですね。
やっぱりおでんに大根は欠かせないですよね。ははっ。俺、いいタイミングで来たな」

楽しそうに話す横顔は、ただの陽気な若者だった。
だけど耳に残った彼の声には、ちくちくとした棘が孕んでいた。

そこから意識を引き離したくても、棘がぷつぷつと引っ掛かり、引き離すことはできない。
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