とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
彼はわたしのことを、兄に寄生する卑しい女とでも思っているのだろうか。

邑木さんから金銭を受け取ってはいない。
だけど邑木さんのマンションに住み、自分では行けないような食事に連れていってもらっている。

どう考えたって褒められた存在ではない。
わたしは与えられているだけの人間で、それも本来なら受け取るべきは玲子さんなのだから。


立ちつくしていると邑木さんが戻ってきた。
まだ鍋を眺めている弟を一瞥してから、わたしを見つめる。

軽く微笑まれ、空気が変わった。
わたしは静かに胸を撫でおろす。

この(ひと)を見て、こんなに安心するなんて。
変なの。おかしいの。

そう思いながらご飯をよそっていると

「待って。もう少しよそって。旨そうだから」

部活帰りにコンビニ前でたむろする男子高生のような顔で、邑木さんはねだった。

つくってよかったな。

顔がほころびかけたけれど、わたしは無表情を貫いた。

いいね。賑やかな食卓で、と言って微笑む詩優さんの目は、やっぱり笑ってはいなかったから。
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