とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
老けて見えたというより、あまりこの(ひと)の年齢について考えていなかった。
わたしが邑木さんについて知っていることは少ない。

そしてそれは、お互いさま。

邑木さんはわたしを、わたしは邑木さんを。
お互いに相手をよく知りもせずに関係を結ぶ。

知らないからこそ、結べるのかもしれない。

「君にはここでなんの負担もなく、自由に暮らして欲しいんだ。
俺がここへ来るときは事前に連絡するから、友達を呼んでもいいし、彼氏を呼んでもいい」

「……わたし、彼氏とは別れたって言いましたよね」

「もちろん覚えてるよ。もし由紀ちゃんに新しい彼氏ができたら、って話をしてる」

「いいんですか。彼氏をつくって、ここへ呼んで」

もちろん彼氏が出来る予定なんてものはない。
それどころか男は全員滅んでしまえばいいとすら思う。
それでも、気になって訊いてしまった。

「俺にだって婚約者がいるから、由紀ちゃんを束縛する権利なんてないよ。
ほかの男とつき合うのは由紀ちゃんの自由だし、ここは自分の家だと思って暮らして欲しい。
それに、それはそれで興奮する」

「興奮……?」

「ここのベッドで由紀ちゃんとその男が寝て、それでまた、そのベッドで由紀ちゃんと俺が寝る。
それって、すごく興奮しない?」

「しません」

「そう?」

「変態ですか」

「わかってもらえないか」

「おかしい」

「うん、おかしいかもな」

邑木さんはそう言って手をのばし、わたしの中指の爪を撫でた。
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