とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
「107番の方ぁー」
受付のお姉さんは今日も変わらず、適度で適当な対応をしてくれた。
これはわたしの主観だけど、こういうクリニックでは笑顔全開で接されるよりも、印象に残らないような、声も顔も思い出せないような、そんな対応がベターなのだと思う。
人の笑顔に触れたくないときだってある。
「次回の予約はどうしますか」
「あ、今日はいいです。ありがとうございました」
前に受診したときに、とりあえず予約していた二回目のクリニック。
康くんのマンションからの帰り道でふと思い出し、慌てて向かった。
わたしはまた、このクリニックへ来るだろうか。
根本を解決するならカウンセリングだと言われたけれど、いまのわたしには金銭的にきつい。
払えなくはない、けれど――。
なにより、まだ人に話そうと思えない。
忘れたいことを思い出すことも、それをきちんと頭で整理して口に出すことも、口に出してそれを耳に入れることも。
すべてをわたしは拒絶している。
半袖から長袖に替わっても、肌が白さを増しても、わたしはまだ夏の殻の中にこもっている。