とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
「おかえり、由紀ちゃん」
玄関の革靴を見て、邑木さんが来ていることはわかっていた。
だけどこの男が料理している姿は想像していなかった。
「……なに、してるんですか」
家主に向かって言う台詞ではないけれど、口をついて出た。
「なにって、料理」
「見ればわかります」
「それならどうして訊いたの。おもしろいな、君は」
くっと笑い、邑木さんは包丁でテンポよくマッシュルームを刻んでいった。
まるで昨日のことなんてなかったような、その様子に面食らう。
もしかして次に刻まれるのはわたしか。
阿呆みたいなことを考えていると、邑木さんは静かに口を開いた。
「昨日のやり直しがしたくて」
「やり直し?」
「君に嫌な思いをさせちゃったから。
でかい仕事をがんばったお祝いを貰うには、こういう方がいいのかと思って」
「……ちょっとでかい、じゃなかったんですか」
「でかいって言って、がんばったことをアピールする方向に変えてみようかと思って」
「邑木さん、わりかし適当ですね」
くすくす笑っていると、邑木さんは目を見開いた。
そういえば今日は眉を書いて、リップをうっすら塗ったくらいだった。
途端に恥ずかしくなり、両手で顔を覆う。