とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
「なに、どうしたの」

「メイクを、全然してないから……」

「そんなこと気にしないでいいのに」

「わたしの顔を見て、驚いてたじゃないですか」

「そういう理由じゃないよ。それより、手は大丈夫?」

「え、手? 大丈夫、ですけど」

なんのことだろう。質問の意図がわからない。
いや、それよりも

「人の顔を見て驚いた理由はなんですか」

「君が笑ってくれたから」

ありがとう、となぜかお礼を言われた。

笑っただけなのに。
笑うよりも先に、わたしは昨日のことを謝るべきだったのに。

罪悪が、ぐるりと胸を旋回する。

「き、がえてきます」

変なところで言葉を切ってしまい、動揺が駄々洩れな自分を引っ叩きたくなった。
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