とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】



――それより、手は大丈夫?



ふと、邑木さんの言葉を思い出す。

まさか、あの(ひと)は。
あの(ひと)は、わたしを見ていたのだろうか。

邑木さんとお寿司屋さんで会ってから車を飛び出すまで、手を傷めるようなことはなにも起きていない。

でも、まさかそんな。
あるわけない、そんなこと。

スマートフォンのサイドボタンを、ぐっと長押しして電源を入れた。
スクリーンが徐々にひかりを帯び、パッと明るくなる。
着信やメッセージの通知がいくつも入っていた。

そのすべては、邑木さんからのものだった。


そうだ。あのフェミニスト気取りが、なにもしないわけがない。


わたしがほぼ牛乳のカルーアミルクを飲みながら、邑木さんとのことや、リキュールが少ないことをネチネチと康くんに訴えている間、あの(ひと)はわたしを探していた。


どうしよう。無自覚に、ひどく自分勝手なことをしていた。


自覚を持ってひどいことをするのだって褒められたものじゃないけれど、自覚がないということは人の気持ちを考えることが出来ないということだ。
ナチュラルにひどいことをする、想像力のない人間。

わたしには松井由香利のことをとやかく言う権利はないかもしれない。
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