好きになっちゃ、だめでしたか?
 あの頃のことを簡単に話すと、矢崎は「へえ、2人の間にはそういうことがあったのね」と俺をちらりと見た。

「留衣にとっては、ナイト様ってことね」

「はあ、なんだよその小っ恥ずかしい言い方」

「だって実際そうでしょ? 泣いてる留衣を助けたってことなんだから」

 確かに矢崎の言っていることは間違っていなかった。

「今はもうちげえし。あいつは俺の助けなんていらないくらいに随分と逞しく成長しましたわ」

「それはさ、大野のおかげじゃん」

 珍しく矢崎は俺の味方になっているようだった。と、話しているとき、授業の終わりを知らせるチャイムが鳴り響いた。

 理系クラスのある校舎に目を向けると生徒が数人出てくるが見え、矢崎と顔を合わせると教室をあとにする。

 向こうの教室に行くのもあれなので、玄関で待つことにした。

 少しすると、ほとんど顔を合わせることのないやつらが玄関へとやってくる。みんな眼鏡をかけていて、いかにも頭脳明晰という雰囲気を漂わせている。

 この前体育祭の打ち合わせにきていたやつもいた。

 最初の人が現れてから5分ほど待った。

 そのとき、2人で話しながら歩いてくるもう1人の【るい】の姿が見えた。留衣には悪いが、こっちのるいはどこから見ても人目を引くほどに可愛い。普通に可愛いのではなく、特別に可愛いという言葉の似合う女子だった。

 矢崎が先に2人に近づいていき、俺はそのあとをついていく。

 話しかける前に、【るい】は俺たちの姿を目に映す。

「あ、あの、るいさん、ですよね? 今ちょっとお話ししたいんですけど」

 るい、と呼ばれた人は隣にいる友人と目を合わせ「ちょっと、待っててくれる?」とまるで俺たちが来るのが分かっていたかのように冷静な声を出した。

「いいですよ、どこに行きましょうか?」

 それじゃあ、と悩んだ結果、俺たちは再び自分のクラスに戻ってきた。

 【るい】は一瞬神山の席に視線をやり、しかしすぐに俺たちを見た。

「すみません、急に。あのちょと聞きたいことがあって」

「はる、神山君のことですよね? 多分」

 
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