好きになっちゃ、だめでしたか?
 待ち合わせは自宅の最寄り駅だった。

 快晴の天気で、空はどこまでも水色が広がっている。
 気温もちょうどよくて、ときどき吹いてくる風が気持ちいい。

 天気はすごくよくてデートには最適な日なのに、心はそんな天気とは反対で……。

 空よりも、グレー色の地面に目を向けてしまう。

 小走りで駅に行くと、春樹君が1人立っている姿が目にはいってきた。

 こうして遠目から見ると、本当に彼はわたしには不釣り合いなほどにかっこいい。春樹君の周囲だけ、空気が違って見える。
 
 それに、私服もシンプルにジーンズにジャケットで、いつもよりも大人っぽさが漂っていた。

 彼の横に立っているるいさんを想像すると、2人はまるで雑誌から出てきた人たちのように思える。

 わたしなんて……。

 立ち止まっているわたしに春樹君が気付き、近寄ってきた。

「おはよう」

「あ、うん、おはよう」

 今日の天気のように、春樹君の笑顔が眩しい。

「どうしたの? そんなところで」

「あ、ううん。なんか忘れ物しちゃったかもって」

 へへっと笑うと、春樹君も同じように顔を綻ばせた。

「大丈夫?」

「うん、勘違いみたい」

「そっか、それじゃあ早速移動しようか」

 電車に乗り、少し遠くにある水族館を目指す。

 車内は空いていてわたしたちは座席に腰かけた。

 いつもよりも距離が近いように感じるのは、多分座席の間隔が狭いせいだ。
 
 右腕が春樹君の左腕とぶつかっている。心臓がはやく動きすぎて、少しだけ息苦しい。

 彼の好きな人がわたしじゃなくても、やっぱり彼の隣から離れたくない。でも……隣にいると苦しくなってしまう。

「春樹君は、水族館、好き?」

「うん、好きだよ。魚たちが泳いでる姿ってあまり見られないし」

「確かに、そうだよね」

「留衣は好き? 水族館」

「うん、もちろん好きだよ。今日行くところ、ちょっと暗くて幻想的だよね」

「確かに。ちゃんと手繋いでないと、留衣迷子になっちゃうかもね」

 と春樹君は笑う。

「そ、そんなことないよ。子どもじゃないんだから」

< 66 / 131 >

この作品をシェア

pagetop