好きになっちゃ、だめでしたか?
「つか、これどうよ? 母さんにぴったり」

 お兄ちゃんはさっきと同じティカップをいろんな方向から眺めている。

「うん、わたしもそれいいと思ってた」

 他に水色や黄色の花もあったけれど、お母さんは花と言ったらピンク、といつも言っている。

「よし、これにするか」

「わたしもなんか見ていい?」

「おー、いいぞ。お金はあとで徴収するな」

 と言って、お兄ちゃんは1人レジへと向かった。

 わたしは鞄にはいっている、さっき春樹君からもらったイルカのキーホルダーに触れる。

 やっぱりもらうべきじゃなかったかもしれない。

 ちゃんと、好きな人がもらうべきものなんだ。

 ううん、春樹君は今日のわたしにこれを買ってくれたんだから、もらってもいい。

 そういえば、水曜日から授業ないんだっけ、1日目は体育祭だったよね、と忘れかけていた行事のことを思い出した。

 お兄ちゃんから聞いた話だと、体育祭のときは、理系クラスもそれぞれに分配されたクラスの陣地に座る。だから、いやでも顔を合わせなければならない。

 と言うことは、春樹君と本物のるいさんも顔を合わせるというわけで。

 わたしの幸せな時間も、もしかしたら今日が最後になるかもしれない。

 春樹君の隣にいられるのもきっと、あともう少し……。

 やっぱり、自分からフッてしまったほうがいいのかな。

 自分から手放した方が、フラれるよりも楽かもしれない。

 アロマのコーナーに行くと、爽やかなレモンっぽい香りがして気持ちがすっと和らいだ。

 今のぐちゃぐちゃな気持ちを、爽やかな香りがすっと包み込んでくれる。

 一つを手に取って、レジへと向かった。
 
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