好きになっちゃ、だめでしたか?
 昨日の夜はあまり寝られなくて、いつの間にか空が暗くなっていた。

 朝食のとき、お兄ちゃんから「大丈夫か?」と声をかけられたけど「大丈夫」と言うことしかできなかった。

 学校に到着すると朝からジャージに着替え、椅子を校庭に運ぶ。女子生徒たちは日焼け止めを塗るのに必死だった。

 天気は体育祭にはちょうどいい曇り空で、白い雲がところどころ水色を隠していた。

 春樹君はいつもと変わらない様子でクラスメイトと話している。ときどきわたしのほうを向いて笑顔をくれる。

 まだ理系クラスの人たちは来ていない。

 と思っていたら、玄関の方からるいさんんが歩いてくるのが目にはいってきた。

 るいさんは今日も奇麗で可愛くて、校庭にいるだれよりも輝いているように見える。

 男子の視線がちらちらとるいさんに注いでいるのが分かる。

 春樹君はどうかな、と思って見ると、やっぱりるいさんのことを見ていた。

「留衣、俺が今日はそばにいて、笑わせてやろうか?」

 蒼がいつの間にか隣にいて、その隣には一華もいる。

「まあ、こんなときはわたしたちに頼ってもいいんじゃない?」

 一華の言葉が心に染みていく。

「2人とも、ありがとう」

 ふと春樹君を見ると、目が合った。

 春樹君は話していた相手と別れ、わたしたちのところに近付いてくる。わたしはつい、視線を逸らしてしまう。

「なに、話してるの?」

 春樹君はわたしたち三人の輪にはいる。水族館で、蒼に嫉妬していたっていう言葉を思い出す。

「体育祭、面倒くさいねーって。1週間文化祭だったらなあって」

 わたしは無理矢理頬を上げた。

「確かに、そっちのほうが楽しいかもね」

「うん」

 視界に、るいさんの姿がちらちらと入りこむ。るいさんの顔を見るたびに、心がぎゅっと痛くなる。

「あ、わたし教室に忘れ物しちゃったから、取りに行ってくる」

 1人で校舎に向かって走っていく。

 玄関に来て靴を履きかえて教室に向かう途中、誰もいないと分かると壁に寄りかかった。冷たかった。

 今日1日、どうやって過ごしたらいいのかな……。

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