好きになっちゃ、だめでしたか?
「どうせなら、るいさんとすっごく仲良い姿、わたしに見せつけてくれればいいのに」

 誰もいない廊下で、自分の声が響く。寄りかかっているとだんだんお尻が下がってくる。

 このまま床に座ってしまおうかな、と思ったときだった。

「なにしてんの」

 声のする方を見ると、お兄ちゃんがいた。

「お兄ちゃんこそなにしてるの」

 お兄ちゃんははーっと息を吐いて、わたしの隣に寄りかかる。

「妹が、あいつと話したあとに走って逃げるのが見えたから、ちょっと様子見に来ただけ」

「シスコンじゃん」

 なんだか少しだけ笑えてきた。

「なんだよ、優しい兄だろ。あとで家で暴れても困るしな」

「そ、そんなこと」

「中学生の頃、好きな人に彼女できたーって、一晩中俺の部屋で泣いてたのは誰でしたっけ? 俺、寝られなくて大変だったんだからな」

 その記憶ははっきりと頭に残っていて、反論したいのに反論できない。

「そう、でした」

 壁から離れて校庭を見ると、春樹君とるいさんが話している姿が目にはいってきた。

 春樹君は満面の笑みを咲かせていて、だけどるいさんはちょっとだけ泣きそうな表情をしている。

 るいさんが春樹君に片思いをしていることが、はっきりと伝わってくる。

 春樹君。なんで好きな人が目の前にいるのに、わたしなんかと付き合ってるの?

 るいさんだって、春樹君のことが好きなのに。2人は両思いなのに……!

 わたしが犠牲になれば全部がうまくいく、そんなこと分かってる。

「おーやっぱあの2人絵になるな」

「お兄ちゃん、誰の味方なのよ」

「そりゃあ、大切な妹ですよ」

 春樹君を見ていると急にこちらに振り向いてきたので、さっと隠れてしまった。お兄ちゃんは相変わらず外を見ている。

 つか、そろそろ行かないとまずいな、とお兄ちゃんはわたしを置いて先に行こうとする。

「ちょ、ちょっと待ってよ」

「なんだよー」

「置いていかないでよ」

 お兄ちゃんのいつの間にか大きくなった背中に隠れるようにして、わたしは校庭へと戻った。
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