好きになっちゃ、だめでしたか?
「その、まだ、留衣さんのこと、好きなんですか?」

「まじ、そこまでにしておけって」

「でも」

 紗季の言いたいことはなんとなく分かる。

 本当は神山はちゃんと留衣のことを好きなんじゃないか。

 今の神山の顔を見れば、誰だってきっと同じことを思う。

 それに、もし留衣じゃなくてるいのほうが好きなら、そのるいが近くにいるのにこんなことを言うはずがない。

「そりゃあ、そう簡単に諦められないよ。仮に大野君が留衣のこと好きでも、留衣にとって大野君が大切な幼馴染だとしても」

 神山は、簡単には折れないくらい真っすぐで、かつ力強い目で俺を見てきた。

 やっぱり……こいつはるいじゃなくて、留衣が好きなんだ。

「かっこいいですね。すごく一途で」

「まあ、幼い頃からずっと片思いしてたから」

 え? どういうこと? という目で見てくる妹をとりあえず無視して、神山を見た。

 眉が下がっていて、留衣と同じように哀愁が漂っている。

 もし仮に本当に神山が留衣を好きだとしても……俺は……。

「じゃあ、僕はこれで。文化祭、楽しんで」

 神山は俺たちに頭を下げたあと、もう1人のるいを残して1人どこかへと行ってしまった。

 クラスメイトの視線を感じ、俺は妹をつれてこの場を去る。

 校内はいつもの静寂ムードから文化祭の賑わいムードになっていて、笑い声があちこちから聞こえてくる。

 コスプレなんかをしてるやつらもいて、いかにも青春という感じだ。

 歩いていると妹に腕を掴まれ、人気のないところへと引っ張られた。

「ね、ねえ。留衣さん、どうしてあの人と別れたの? あの人、まだ留衣さんのこと好きって」

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