好きになっちゃ、だめでしたか?
「それは……」

 妹は、逃がさない、というような目で俺を見てくる。

「分かった。ここじゃあれだから」

 俺は妹を体育館に連れてきて適当に食べるものを買い、1番目立たない角の席に座った。

 周囲は人々の声に埋め尽くされていて、ちょうどいい。

 俺は買ってきた焼きそばを妹に渡し、自分もフランクフルトを食べながら話しはじめる。

「まあ、本当は言うつもりなかったんだけど」

「うん」

 妹はせっかく買ってきた焼きそばの蓋を開けもせず、俺に顔を近づけてくる。

「あいつ、さっきの美形な? 同じ名前の女子と留衣を間違えてんだよ。ほら、さっきの美人覚えてる? 神山のこと呼んでた」

「あ、うん、春樹君って呼んでた人。すっごい美人だったよね」

「そ、それが本当の神山の片思いの相手。幼い頃にしか会ってないから多分勘違いしてんだと思うけど。いや、最初は勘違いで、告白したあとに多分本当のことが分かったって感じ? 留衣は全部知ってて」

 妹は一気に目を見開いた。

「そ、それ本当なの?」

「まあ、実際もう1人のるいにも話聞いたし。幼い頃に神山と遊んだって話」

「ええっ」と、どんな感情なのか分からない妹の声が聞こえる。

「そう、なんだ。でも、なんかさっきの話聞いてると、本当に留衣さんのこと好きそうだったんだけどね。お兄ちゃんのことも睨んでたし」

 確かに、正直さっきの神山の視線にはこっちが折れそうになった。

 本当に留衣のことが好きだと言っているような……。

 それでも俺は、自分の気持ちを自覚してしまった以上、どんな理由でさえ留衣を泣かせるやつは許せない。

「でも確かに、自分じゃない人を好きな人と一緒にいるの辛いだけだもんね。でも、あの人、本当かっこよかったなあ」

 妹は頬杖をついて、まるで漫画のヒロインのようにはあーっとため息をついた。

「まあ、確かに、かっこいいよな」
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