長い間好き避けしていた伯爵が噂の悪女に騙されそうになっていたので、助けようと説明をすればするほど好きアピールだと勘違いされた私の困惑。
 未婚男性としてはすべての条件を兼ね備えているというのに、彼はまだ独身で婚約者も居ない。

 となると、決して逃さないと言わんばかりの、着飾ったご令嬢たちにいつも取り囲まれることになる。まるで丸々とした一匹の羊を、今か今かと首を掻き切るチャンスを待つ飢えた狼の群れだ。

 彼が持つ容姿と経歴、そして未だに決まった人の居ない花の独身という立ち位置。誰しも簡単に予想出来る通りの事態が、こうした夜会などでは毎回巻き起こっていた。

 そして、私。イヴリン・ロセウムはというと、下位貴族である子爵家の令嬢だ。

 でも我がロセウム家の代々当主は卓越した商才を揃って持っていたおかげか、一族はお金だけはたんまりと持っている。

 いやらしい話、私との結婚の際に手に入るだろう巨額の持参金を狙っている男なんて、本当に数なんていちいち数えることも出来ないくらい、腐るほど寄って来るのである。

 私が幼い頃からそういったことが続いたので、自分と同じ年頃の男性からのアプローチには本当に辟易していた。誰も彼もお父様の持つ縁故やお金目当てで、私の話なんてろくに聞いてやしない。

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