双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
葵は彼を真っ直ぐに見て、頷いた。

「おっしゃる通りかもしれません」

「……そうか、わかってくれたか」
 
はじめて葵の口から意に沿う言葉が出たことに、山里の表情が明るくなる。

そこへ葵は間髪入れず付け足した。

「でも、晃介さんの口から聞くまでは、サインはしません」

 きっぱりと言って、自分の近くにある万年筆を山里に向かって突き返した。

「たとえどんな話だとしても、私、晃介さんから聞かなくては納得できないんです」

山里が一瞬ぽかんと口を開いて、すぐに顔を真っ赤にする。

「小娘が、馬鹿にしやがって」と吐き捨てるように呟いた。

彼は、机の上の万年筆を乱暴に掴み、鞄に突っ込んで勢いよく立ち上がる。そして大介の方を見た。

「白河先生」

「……は、はい」

「晃介君には、遊ぶならもっとかしこい女にしなさいとお伝えください。こんな強情で可愛げのない……。とにかく! どう後始末をつけるか、しっかりと見させていただきますよ」

大介の返事を待たずに、足早にドアの方へ歩いていく。

「あ、パパ、待って!」
 
美雪も後に続いた。
 
最後に、山里は忌々し気に舌打ちをしてそのまま部屋を出ていった。
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